第43回日本免疫学会学術集会

会長挨拶

日本免疫学会の会員の皆様

会員の皆様におかれましては、ご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて、本年2014年12月10日(水)〜12日(金)の3日間、京都市の国立国際会館で第43回日本免疫学会学術集会が開催されます。本学術集会はここしばらく、千葉幕張メッセまたは神戸国際会議場のいずれかで開催されてきましたが、第43回は6年ぶりに京都での開催となりました。主催者の地元で開催させていただきたいという希望を、理事会、評議員会を経て総会でお認めいただいたことに心から感謝申し上げます。当地での開催をお認めいただいたからには、すべての会員の皆様にとって魅力のある、かつ有意義な学術集会にさせていただきたいと、実行委員会一同決意を新たにして鋭意準備を進めているところです。

私事にわたり恐縮ですが、私が初めて本学会で演題発表したのは多分第5回の集会で、医学部を卒業した年でした。当時はもちろん一般演題のみで、1人の持ち時間が30分という時代であり、大変なストレスで繰り返し発表の練習をしたことを思い出します。その後は留学時を除きすべて参加していますが、免疫学会といえば議論白熱のすさまじい学会であるというのがもっぱらの定評でした。年々に北海道から九州まで日本各地に行きこの熱気のある議論に参加することは(土地土地での名物料理を同僚や久しぶりに会う会員仲間と楽しむ期待を含め)、本当に楽しいものでした。本集会が、会員の皆様の心に残る集まりになれば幸いであると心から願っております。

さて、サイエンス誌は、2013年度のBreakthrough of the Yearに「Cancer Immunotherapy」を取り上げました。過去半世紀に亘って、生物学の領域でこれほど毀誉褒貶の激しかった「がん免疫」あるいは「免疫監視」が、生物学全体の中でこのような評価を受けたことは少し驚きでもありました。逆説的ですがこれは、免疫学は確かに非常に発展したけれども、多くの重要で本質的な免疫事象は決してまだ「決着」していない、ということだろうと思います。技術や方法は飛躍的に進みますが、基本命題はそんなに変わるものではないでしょう。他方で近年の、免疫事象の多様な医学生物学領域への関与の広がりには、文字通り目を見張るものがあります。Immune metabolism(これにはリンパ球の代謝と全身代謝系の免疫制御の両義がありますが)、Osteoimmunology, Microbiota, Immune senescenceなど、免疫系による個体の恒常性への関与の広がりは、これまで考えもしなかった新しい免疫学の世界を垣間見させてきています。免疫事象は、想像以上に広範な生命現象に足を伸ばし根を張っているように思われます。「世に免疫の種は尽きまじ」というところでしょうか。その意味では、免疫学は決して成熟した領域では無く、依然として発展途上にあると言えるかもしれません。

第43回学術集会では、この現状をできるだけ反映した魅力的なシンポジウム、教育的レクチャー、関連分野セミナーなどを企画すべく準備を進めています。しかし言うまでも無く、学術集会の最も重要なイベントは、会員の皆さんによるオリジナルな成果発表と討議(ポスターとワークショップ)です。とくに現場の若い研究者の皆さんの生のデータに基づく談論風発こそが、学術集会の要です。本当に聞きたいことが聞け、言いたいことが言える開放的なポスター発表・ワークショップになることを心から希望しています。演題募集は5月末より開始される予定です。是非とも出来るだけ多くの会員の皆さんが、成果を持ち寄って発表していただけることを期待しています。学術集会後は週末となります。冬の京都は、サイエンスの談論風発の後の皆さんの頭の疲れをやんわりひんやり癒やしてくれることと思います。

2014年3月
第43回日本免疫学会学術集会会長  湊 長博